
こんにちは、春日です。
いまSNSで、「仲介手数料3%は高すぎるのでは?」という議論が再燃しています。
このテーマは過去にも何度か話題になっていますが、今回特に注目された理由は不動産価格の高騰や様々な仲介サービスの登場によって、手数料のあり方に対する意識がますます高まっているからではないでしょうか。
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・高額物件でも手数料の割合が変わらないのはおかしい
・SUUMOなどのポータルサイトに載せれば自然に売れる物件に、3%もの手数料を払う価値があるのか?
・M&A業界のレーマン方式のように、価格や成果に応じたスライド制にすべき
・仲介業務は単なるマッチングではなく、契約リスクの管理や調整も含まれる
・手数料を下げれば業界全体の人材流出につながり、サービスの質が低下する
・都心のタワマンと違い、地方や特殊な物件では3%でも業務負担やリスクが大きく、むしろ安すぎるケースもある
仲介手数料をめぐる議論は単なる「高い・安い」の表面的な話ではなく、不動産取引における仲介業者の役割そのものに関わる問題です。
では、この議論を長年不動産業界で働いてきた私はどう捉えたのか?そして、手数料が高いと感じる人はどう行動すればいいのか?私なりの考えを述べます。
(※あくまで個人的な見解ですので、ご理解のうえお読みください)
▼仲介手数料についての詳しい説明は割愛するのでこちらを参考にしてください。
<消費者の皆様向け>不動産取引に関するお知らせ|国土交通省
この記事の目次
私はこのSNSの議論をどう捉えたのか?
まず結論から先に述べると、私も「物件力で売れる」SNSで議論の発端となった都心のタワーマンションの事例においては、仲介手数料3%は高いと感じています。
しかし、すべての物件で一律に「3%は高すぎる」とは思ってません。
なぜなら、仲介の難易度やリスクは物件の特性や取引の条件によって大きく異なるからです。
仲介は物件によって難易度が異なる
私の経験として、少し昔の話をさせてください。
私は前職で、投資用不動産(一棟・アパート・区分)を専門に扱っていました。
お客様の多くは不動産投資家であり、彼らの目的は「資産運用と利益の最大化」です。
「手数料を安くしてもらうことよりも、良質な物件を継続していち早く優先して紹介してもらうこと」の方が重要という考えが一般的でした。
投資用不動産の仲介は、一般的な実需向けの築浅マンション売買とは異なり、以下のような知識と経験が求められました。
入居者トラブルの管理
物件の収益性を左右するため、入居者の属性や賃貸借契約のリスクを把握する必要がある。
契約関連業務・重要事項説明書の作成
不動産の特性を踏まえた細かな契約条件の調整が求められる。
融資や資金調達のサポート
投資家が金融機関からの融資を活用するため、ローン交渉や書類作成のサポートが求められる。
地方出張や物件調査
投資対象となる物件は東京だけでなく地方にも広がるため、現地調査が不可欠。
これらは一部の例に過ぎませんが、投資用不動産の仲介は難易度が高く、専門知識と高度な交渉力が求められる仕事でした。ここでは書ききれないような裏話や苦労が山ほどあります。
そのため、手数料の値下げ交渉をされることはあっても、結局 「きちんと価値を提供できる仲介業者(担当者)」には、仲介手数料上限額(3%+6万円)を支払う投資家が多かったのです。
実需向けの不動産はどうか?
一般の住宅購入者の主な目的は、「資産運用」ではなく「安心して快適に暮らせる住まいを手に入れること」です。
一生に一度、多くても二度程度。不動産の売買を何度も繰り返す人は稀です。
そのため、手数料に対する意識は不動産投資家とは異なります。
特に最近では、「住宅価格の高騰」+「物件の情報がネットで簡単に手に入る」 ことから
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「SUUMOなどのポータルサイトで見つけた物件なら、仲介業者の仕事はそこまで多くないのでは?」
「売主と直接交渉できるなら、仲介会社は不要では?」
と考える人が増えてきています。
これらの意見は一理ありますが、ここで重要なのは、物件の種類や取引の難易度によって、「仲介手数料の価値が変わる」という点です。
⚫︎権利関係が複雑な土地や戸建て → 調査・交渉・契約調整の負担が大きいため、3%の手数料は妥当。
つまり、今回のSNSの議論は一律に「3%が高すぎる」という話ではなく、「物件の種類・取引の難易度に応じた適正な手数料とは?」という本質的な議論にするべきだと思いました。
②手数料が高いと感じる人はどうすればいいのか?
仲介手数料3%が高い!と感じるかどうかは、取引の立場や物件の種類、仲介の難易度・消費者の価値観によって異なるでしょう。
しかし、手数料を抑えるための選択肢があることは確かです。ここでは、売り手と買い手の視点に分けて考えてみましょう。
売主が手数料を抑える方法
✔ 「手数料の割引」を前面に打ち出している仲介会社を選ぶ。
✔ 仲介手数料が安い代わりに「広告費を別途請求」する会社もあるため、条件を細かく確認する。
売主にとって最も重要なのは、希望価格で売れること、充実したサービスを受けられること、信頼できる担当者を見つけることです。
仲介会社も委任物件を増やすことが至上命題のため、各社は差別化のためにさまざまなサービスを提供しています。
特に、売却依頼を獲得するために手数料を値下げするケースは、大手・中小問わず多く見られます。
ただし、大手は取引エリアや物件種別が広いため、公式には「手数料値下げ」を掲げにくいのが実情です。しかし、実際には交渉次第で手数料を下げてくれることが多いのも事実です。
私が働く会社も、競争の激しいエリアで他社と差別化を図るため、仲介手数料1.5%を前面に打ち出しています。
これは私自身が売主の立場だったら「手数料の値下げ」「設備保証」「電子契約」などのサービスがあったら良いと考え、会社に提案したものです。
しかし、社内の営業担当からは反対意見もありました。なぜなら、
・築浅マンションのように手間がかからない物件だけではなく、権利関係が複雑な土地や戸建てもあるため、一律の値下げは難しい
・売主との交渉で「この価格で売れるなら手数料は満額払う」といったケースもある
といった事情があるからです。
結局のところ、売主は仲介会社のサービス内容を比較し、手数料を交渉しやすい会社を選ぶのが最も有効です。
・競争が激しいエリアでは、手数料の値下げ(定額制)を打ち出す仲介会社が増えている
・信頼できる担当者を基準に選ぶのか、コスト優先で選ぶのか、売主自身が判断する必要がある
買い手側の戦略
買主にとって重要なのは、「希望の物件を適正な価格で買うこと」「諸費用をできるだけ抑えること」の2点です。
仲介手数料の値下げ交渉自体は、どの物件でも可能です。ただし、実際に応じてもらえるかどうかは物件の特性や市場の状況、仲介会社の営業方針によって異なります。
※手数料の値下げを公表している会社は、もともと 複数の不動産会社で取り扱える物件を中心に扱っているケースが多く、 競争が生じやすいため交渉がしやすい 傾向があります。
人気エリアや競争が激しい物件では、売主や仲介会社の条件を受け入れる買い手が優先されるため、大幅な手数料の値下げ交渉は難しくなります。
そのため、手数料が値下げできるかどうかは?
「どの物件を選ぶか」「どの仲介会社(担当者)を選ぶか」「交渉のタイミング次第」で変わると言えます。
消費者目線で考える、これからの不動産仲介業
今回のSNSでの議論は、都心のマンション売買が中心でしたが、不動産取引全般における「仲介業者の付加価値の低さ」に対する不満が根底にあると感じました。
仲介業は、ただ物件を紹介するだけではなく、
・契約リスクの管理
・売主・買主の交渉サポート
・市場分析と適正価格の見極め
・法的なトラブル回避
など、 消費者がスムーズに取引できるように調整するのが本来の役割です。
私自身も、サービス業としての本質を忘れず、お客様にとって「頼んでよかった」と思ってもらえるような質の高いサービスを提供することが何より重要だと改めて感じました。
「仲介手数料の適正なあり方」 については、現時点で明確な答えを出すのは難しい。それでも、多くの方が抱えている疑問や課題については、今後も考え続けたいと思います。
何か新しい視点や提案が浮かべば、また発信していきますので、その際はぜひ 皆さんのご意見も聞かせてください!
今回の記事が、仲介手数料に対する理解を深める一助になれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。