振り返ると、去年の今頃はコロナの影響で「不動産価格は下落へ転換する!」と題した新聞やネット記事を毎日のように見ましたが、結果はむしろコロナがきっかけで更に上昇しました。
不動産業界は大手企業のオフィスビルの売却が加速、テナントの撤退による「空室の長期化」と・・とても好景気とは言えない状況にもかかわらず・・
都心を中心とした実需向けの不動産価格の高騰が止まりません。
「一体、何が起こっているのか?」
今回はその理由について、考えました。
2020年、異常なまでの価格高騰を目にした現場の舞台裏。
紹介するのは文京区の事例です。
●売出・成約事例、反響情報から数年前と比較してどんな変化が起きているのか?
今後の物件探しに少しでもお役に立てたらと思います。
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この記事の目次
不動産バブルの前兆か?
2020年、1回目の緊急事態宣言が発令されたの4月7日。
4月16日には対象を全国に拡大し、最終的に東京の緊急事態宣言が解除されたのは5月25日。
この期間、多くの不動産会社が店舗営業の休止や時短営業の対応をしたことにより、結果的に前年と比べると取り扱い件数や売上が大きく落ち込みました。
私もこの時はかなり厳しい状況に追い込まれると危惧しましたが、6月以降異常なまでの価格高騰を目にすることになるんです。
コロナの影響で需給バランスが崩れました。
野菜の価格が乱高下するのと同じです。
災害や天候不順の影響で不作になれば、供給より需要が高まり価格も高くなります。豊作の場合は、需要に対し供給過多となるので価格は下がりますよね。
それでは、順に解説します。
価格が高騰した理由①「買い手が増えた」
まずはこちらをご覧ください。
私が働く文京区の街の不動産屋の2020年度の月毎の反響数です。
4月に大きく減少しましたが、中旬以降から自粛期間を利用して物件を探す人が増え始め、GW明けから反響数が爆増したんです。
例年、月の反響数の平均は100件。
前年と比べるとどれくらい増減があったのか?というと・・
2020年1月時点ですでに前年と比べると+32%UP、4月に反響数が一旦落ちてからは5月は+87%、6月は+115%、7月+117%と急激に伸びました。
その結果、うちは創業してから15年経ちますが年間の反響数は過去最高。
その影響を受けて成約数も伸び上半期売上も過去最高の結果になりました。
価格が高騰した理由②「在庫がなくなる」
4月12日に東日本不動産流通機構が2021年3月度のサマリーレポートを発表しました。
詳しくはこちら東日本不動産流通機構2021年3月度サマリーレポート
レポートによると首都圏の中古マンションの成約件数は4,228件で、前年比プラス16.1%で1990年5月の機構発足以降、過去最高。
これに対し、新規登録件数は前年比マイナス19.3%減、在庫件数は前年比マイナス24.9%の大幅減となり2019年12月から16か月連続で前年同月を下回る結果になったそうです。
2020年文京区の在庫件数はどうだったのか?
こちらをご覧ください。
2020年1月~12月までの月毎の土地・戸建・中古マンションの在庫件数です。
注目して見ていただきたいのは前年同月比です。
2019年と比較すると一度も在庫件数が上回ることなく下回り続けました。
買い手が増えているのに在庫が少ないとどうなるか?
需要に対して供給が極端に少ないわけですから価格が上がるわけですね!
価格が高騰した理由③「売り手が価格を上げる」
東日本不動産流通機構のレポートで今度は「首都圏地域別中古マンション成約㎡単価」のページを見てみます。
東京23区の成約平米単価は88.34万円、坪単価は291.9万(70㎡の場合は6,183万円)で前年比プラス13%
緊急事態宣言が解除された5月。うちの会社でいうと反響数が爆増した5月から11か月連続で前年同月を上回り続けてます。
コロナがきっかけで当初の予定より前倒して家を探す人が増え、価格がどんどん上がるのを目にして焦って探す人も増えた。
それに対し売り手はコロナで売り止めたり、価格を上げて売らないと住み替え先の家を買えない状況になっている。
現時点では、不動産価格がすぐに下がる理由が見つかりません。
一次取得者にとってかなり厳しい状況です。
「場所」「広さ」「築年数」など予算の関係で妥協しなければならない点が増えています。
2021年4月現在、文京区でマイホームを探すならいくら必要なのか?
成約坪単価から現在の相場を見てみましょう。
まず中古マンションの場合です。
2000年築以降50㎡以上で探す場合の目安としてご覧ください。
新築や築10年以内で探すとなると当然ですがもっと高くなります。
続いて土地です。
道路付けなど条件が悪い土地を入れてこの平均値になりますので、道路幅員が4m以上車が通行可能な土地や人気の高い住宅地だと坪500万前後の物件も出てきています。
最後に一戸建てを探す場合です。
戸建の場合は道路条件や場所、広さによって全然価格が変わりますので、文京区で土地が15坪、延床80㎡台の新築戸建を探す場合の目安を紹介します。建物価格は2,300万で計算します。
ざっくりではありますが、以上が現在文京区で探す場合の相場となります。
2020年を振り返って
この1年はほんと驚くようなことがたくさんありました。
特に印象的だったのは2019年に文京区で売りに出た中古戸建。立地条件は良かったですが、高すぎて1年以上売れ残ってたんです。
コロナの影響で一旦売り止めにし、市況が盛り上がった夏頃に再度販売して、すぐに成約。驚いたのは売れた価格が当初よりも高かったことです。
お客様から売却相談を受けた時も、こちらが査定する価格よりも他社の方が高いケースがあり・・最終的に売出価格はお客様が決めるのですが、より高い価格を出してくれた業者に任せたいと言われました。
仕入れの入札案件でも地元業者ならではの相場観が不利に働くこともあったのかなと思います。
マイホームを探す方にとっては、
●居住中の物件はコロナ禍で制限があり、自分の都合で内見ができない。
●在庫が少なくて比較検討する物件が十分でない。
●急いで決断しないとめぼしい物件がどんどんなくなる。
こんな状況を目の当たりにしたと思います。
超低金利の住宅ローンが購買意欲を後押しし、コロナの影響で住まいに求めるニーズが変化し、前倒しで探す人が急激に増え、一気に在庫がなくなり、売り手に有利な市場が今も続いています。
今回は、「なぜ不動産価格はコロナ禍でも上昇を続けたのか?」というテーマでお届けしました。
今の相場について別の視点で解説する記事をまたUPしたいと思います。