こんにちは、春日です。
年末と年明け早々、新聞社と週刊誌の記者から、こんな取材依頼が届きました。
「文京区のマンション価格の高騰と、増加する中国人家族の影響について教えてほしい」
ここ数年、文京区に限らず都心を中心に不動産価格が高騰したのは誰もが知るところ。
記者の関心は、「中国人による購買力が価格上昇にどう影響しているのか?」そして、「外国人家族の増加が学校や地域社会にどんな変化をもたらしているのか?」という点にありました。
ところが、わたしはこの取材をお断りしました(えっ!なんで?
理由は、私自身がこのテーマに関して適任者ではないからです。
・子供は文京区の公立小学校に通っていない
・日本語が堪能ではない中国人は中国語対応を専門にする不動産会社に相談にするから
確かに、文京区で物件を探している日本語が堪能で日本で働く中国人のお客様からの相談はうちにもあります。
しかし、「ここ数年で急増した」「投資目的で購入している」というような大きなトレンドの変化は感じていません。
だからこそ、実態を詳しく知るためには、中国人向けの不動産会社に取材してほしい。具体的な資金計画や希望エリア、価格帯、そして実際にどれくらい増えているのかなど、ぜひ調査をもとに記事にしていただきたいとお願いしました。
では、なぜ文京区のマンション価格はこれほどまでに高騰したのでしょうか?
その理由のひとつは明確です。需要に対して供給が圧倒的に足りていないこと。これが価格を押し上げ、物件を探しにくくしている大きな要因だと考えられます。
「それって他のエリアでも同じじゃないの?」と思われるかもしれませんが、文京区は特にその傾向が強いのが特徴。新築供給が極端に少なく、中古市場に流れる物件も限られているため、限られた選択肢の中で価格が押し上げられています。
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では、実際の取引データからどのような動きが見えるのか?
本記事では、2024年の文京区中古マンション市場をデータで振り返りながら、価格上昇の背景や文京区の特徴について解説します。今年購入や売却を検討される方に少しでも参考になれば嬉しく思います。
動画版(住まいるTV)で見たい方はこちらからどうぞ。
この記事の目次
①首都圏中古マンション市場の全体概要
昨年、物件探しをしてた方はこんなことを感じませんでしたか?
もしそう感じたなら、それは決して気のせいではありません。データからも明らかに、2024年の首都圏中古マンション市場は価格が上昇しており、特に都心部ではその動きが顕著でした。
ここでは、文京区のマンション市場を深掘りする前に、まず首都圏全体の中古マンション市場の動向を簡単に振り返りたいと思います。
首都圏全体の価格動向
2020年以降、首都圏全体で中古マンション価格が急激に上昇しています。その背景には、新型コロナウイルスの影響、インフレ、建築資材の価格高騰など、さまざまな要因が絡み合っていますが、データを見ると一目瞭然です。
たとえば、2020年から2024年にかけて、首都圏全体の平均成約平米単価はなんと 39.9%の上昇を記録しました。前年比で見ても、2024年は6.8%の上昇です。
「39.9%って…そんなに上がるもの?」と思われる方もいるでしょう。
都心エリアと郊外エリアの二極化
次に注目すべきは、「エリアごとの価格差が広がり続けている」という点です。
特に顕著なのが、都心3区(千代田区・中央区・港区)です。2024年の 平均成約平米単価は185万円 に達し、前年比で 18.9% の上昇を見せています。
さらに、2020年と比較すると…。
2020年1月の平均成約平米単価は 約114.8万円 だったのが、2024年12月には 約202.5万円 に!つまり、わずか4年間で 76.5%の上昇を記録しています。
都心エリアの価格高騰の理由
理由①
新築マンションの供給が圧倒的に減少していることです。土地が限られている都心エリアでは、新たなマンション開発が難しく、希少性が高まっています。
理由②
円安による海外投資家の需要増加。特に富裕層を中心に、都心の高級マンションは投資対象として認知され、価格を押し上げています。
理由③
高所得者層の購買力。立地や眺望、豪華な設備を備えた「ブランドマンション」が多いことも特徴です。これらの物件は、投資だけでなく、実際に住む目的でも需要が高く、価格上昇の一因となっています。
これらは、不動産流通機構が公表している「月例マーケットウォッチ」のデータをもとに、私がまとめたものです。
気になるエリアの詳細はぜひこちらのリンクからご確認ください。
2024年のデータを見ると、首都圏全体の中古マンション価格は確かに上昇していますが、エリアごとに見ていくと、価格差がどんどん拡大していることが分かりますよね。
今後は二極化がより鮮明になると予想されます。
2024年文京区の中古マンション市場を振り返る
レインズデータ/文京区中古マンション成約価格
全日本不動産流通機構「レインズ」のデータを基にした、文京区内の成約データを見てみましょう。こちらは50㎡以上の中古マンションを対象に集計しています。全体の平均価格が高めなのは、広さを50㎡以上に絞り込んでいるためです。
2024年文京区の平均成約価格:約9,494万円
前年比:5.5%の上昇
▼専有面積帯ごとの結果はこちら
文京区で人気の70㎡台の中古マンションを見ると
平均価格:10,675万円
平米単価:約144.5万円
平均築年数:21年
これはあくまで平均値のため、取引時期や高額物件の影響で変動しますが、築10年以内にこだわる場合、価格帯はさらに跳ね上がり、1.5億円を超えるケースも少なくありません。コロナ以前と比べても、文京区の中古マンション市場は大きく変貌を遂げたといえます。
文京区の中古マンション市況
取引データについて
では、ここからさらに深掘り解説するために取引データについて補足します。
ここまで「レインズ」に登録されているデータを基に解説してきましたが、実際にはレインズに登録されない物件も多く存在します。
そこで、私が普段の業務で独自に収集している取引履歴データも加え、より正確で実態に近い市場動向をお伝えします。取引データの概要と注意事項はこちらになります。
このデータを基に、文京区の「全体結果」「専有面積別」「築年数別」「駅距離別」「階数別・総戸数別」の5つの視点で解説します。
全体結果
2024年、文京区で新規に売り出された物件数は1,034件、成約件数は953件でした。
売出価格と成約価格には平均5~6%の値下げ幅が見られ、売出物件の半数が値下げを経て成約している点も特徴的です。
専有面積別の割合
▼売出事例
平均値 | 件数 | 割合 | 価格 | 坪単価 | 専有面積 | 築年数 |
40㎡台 | 239件 | 23.1% | 5,020万 | 374.9万 | 44.27㎡ | 32.3年 |
50㎡台 | 250件 | 24.2% | 7,266万 | 435.6万 | 55.15㎡ | 26.1年 |
60㎡台 | 224件 | 21.7% | 9,191万 | 468.2万 | 64.88㎡ | 25.3年 |
70㎡台 | 169件 | 16.3% | 11,053万 | 493.2万 | 74.09㎡ | 26.1年 |
80㎡台 | 64件 | 6.2% | 12,422万 | 486.7万 | 84.36㎡ | 28.7年 |
90㎡台 | 31件 | 3.0% | 13,856万 | 487.8万 | 93.88㎡ | 31.6年 |
100㎡以上 | 57件 | 5.5% | 18,134万 | 468.2万 | 128.02㎡ | 35.8年 |
▼成約事例
平均値 | 件数 | 割合 | 価格 | 坪単価 | 専有面積 | 築年数 | 成約日数 |
40㎡台 | 197件 | 20.7% | 4,676万 | 347.7万 | 44.47㎡ | 31.4年 | 120.5日 |
50㎡台 | 256件 | 26.9% | 6,826万 | 408.9万 | 55.16㎡ | 26.2年 | 108.2日 |
60㎡台 | 215件 | 22.6% | 8,889万 | 452.4万 | 64.96㎡ | 24.3年 | 95.1日 |
70㎡台 | 151件 | 15.8% | 10,934万 | 487.7万 | 74.1㎡ | 22.4年 | 107.2日 |
80㎡台 | 57件 | 6.0% | 10,934万 | 487.7万 | 83.99㎡ | 27.2年 | 110.9日 |
90㎡台 | 25件 | 2.6% | 13,724万 | 482.7万 | 93.99㎡ | 28.9年 | 103.4日 |
100㎡以上 | 52件 | 5.4% | 15,657万 | 408.3万 | 126.79㎡ | 36.1年 | 137.6日 |
全取引の半数は40㎡〜50㎡台の物件によって構成されています。
部屋のサイズが大きくなるにつれて価格も高くなり、比較的早く成約に至る傾向が読み取れます。これは、分譲市場においてはより広い部屋を求める需要が高いためです。
築年数別の割合
▼売出事例
平均値 | 件数 | 割合 | 価格 | 坪単価 | 専有面積 | 築年数 |
築10年以内 | 162件 | 15.7% | 12,026万 | 641.4万 | 61.98㎡ | 5.8年 |
築11〜20年以内 | 219件 | 21.2% | 10,885万 | 562.2万 | 64.01㎡ | 16.4年 |
築21〜30年以内 | 212件 | 20.5% | 9,411万 | 463.1万 | 67.16㎡ | 25.2年 |
築年数上限なし | 441件 | 42.6% | 6,517万 | 330.6万 | 65.15㎡ | 43.7年 |
▼成約事例
平均値 | 件数 | 割合 | 価格 | 坪単価 | 専有面積 | 築年数 | 成約日数 |
築10年以内 | 159件 | 16.7% | 11,027万 | 589.7万 | 61.81㎡ | 5.7年 | 92.7日 |
築11〜20年以内 | 221件 | 23.2% | 9,862万 | 514.2万 | 63.41㎡ | 16.4年 | 94.3日 |
築21〜30年以内 | 211件 | 22.1% | 9,181万 | 445万 | 68.19㎡ | 25.1年 | 98.2日 |
築年数上限なし | 362件 | 38.0% | 6,043万 | 307.2万 | 65.03㎡ | 43.7年 | 132日 |
文京区に限らず他のエリアでも同様に、築年数が古くなるにつれて物件価格が下がる傾向が見られます。
築20年以内の物件は全体の約40%近くを占めています。
築年数が30年以上になると価格はさらに下がりますが、立地や専有面積などの条件次第では十分に魅力的な選択肢となります。
文京区で特定のエリアや条件にこだわる場合、築年数に対する柔軟な視点を持つことで、より幅広い選択肢を検討することができるでしょう。
駅距離別の割合
▼成約事例からまとめました
駅からの近さは、成約価格や需要の強さに直結しており、特に最寄り駅から徒歩1〜3分の物件は人気が高く、平均成約日数は約99日と短い傾向にあります。一方、駅から徒歩11〜15分の物件では、平均成約日数が約142日と大幅に長くなっています。
文京区の特徴として、交通アクセスが非常に良いことから、最寄り駅まで10分を超えるマンション自体が少ない点(全体の2.6%)が挙げられます。駅から遠い物件は市場にほとんど出回らないため、エリア全体で駅近物件の割合が高いのが特徴です。
階数別・総戸数別の割合
▼成約事例からまとめました
文京区では、5階〜15階の中高層マンションや、総戸数50戸未満の小規模マンションが主流です。
また、大通り沿いに建つ物件が多く、豪華な共用施設を備えたマンションはごく限られた存在です。そのため、大規模マンションや高層マンションを希望する場合、選択肢が非常に限られます
以上が、2024年の文京区中古マンション市場をデータで見た傾向と大まかな特徴です。
文京区ならではの市況が少し掴めたのではないでしょうか。
2025年に文京区で購入を検討する人へのアドバイス
文京区で中古マンションを探すことを検討している皆さんに向けて、2025年に押さえておきたい重要なポイントを3つにまとめました。
最新データを活用して相場感を掴む
まず、物件探しの第一歩は、自分の資金計画が文京区の相場と一致しているかを確認することです。また、希望条件に合う物件が出やすいエリアなのかを知ることも重要です。
もし資金計画や条件が市場の現実とズレている場合、柔軟に見直すことが、理想の物件に出会う近道となります。
そこで、文京区の中古マンション市場をわかりやすく把握するため、2024年の取引データをもとにした早見表を作成しました。
この早見表では、築年数や広さごとに売出価格と成約価格を比較しており、相場感を直感的に掴むことができます。
たとえば、70㎡台で築10年以内の物件を探している場合、この表の該当項目に注目することで、予算感や傾向が見えてきます。
ぜひ画像保存していただきご活用ください。
エリアごとの価格と特徴を理解する
次のステップは、自分に合ったエリアを知ることです。
文京区は23区中20番目の広さで、電動自転車があれば端から端まで30分程度で移動できるコンパクトな地域です。しかし、坂が多い地形や街の雰囲気はエリアによって異なり、どのエリアを選ぶかはライフスタイルや個人の好みによります。
これまで文京区全体の平均値をもとに話してきましたが、実際にはエリアや物件の条件で価格に大きな差が生じます。
例えば、「どのエリアの価格が高いのか?」は気になりますよね。
文京区のボリュームゾーンである専有面積50㎡~80㎡台、築20年以内の2024年成約事例を集計した平均値は次のとおりです。
ではここから、「エリア別」「最寄駅別」「小学校区別」で全体の平均坪単価を上回るエリアを詳しく見ていきましょう。
ただし、エリアごとの成約件数が少ない場合、高額物件などの外れ値が平均坪単価に影響を与えるので、あくまで目安としてご覧ください。
各エリアごとに「おそらくあのマンションが平均値を引き上げているんだろうな」とすぐに思い浮かぶ人もいると思います。
これらのエリアは、文京区内でも特に高価格帯の物件が多く取引されており、価格上昇の傾向が続いていると言えます。
売出情報を頻繁にチェックし、行動力を高める
希望エリアや資金計画が固まったら、次に重要なのは売出情報のチェックとスピーディな行動です。特に、専有面積50㎡〜80㎡台で築20年以内の物件を探す場合、売出件数は非常に少ないのが現実です。
例えば文京区で人気の高い窪町小学校区のデータを見てみましょう。
2024年に窪町小学校区で新たに売り出された物件は、築20年以内で70㎡台の中古マンションはわずか2件、80㎡台に至っては1件のみという結果でした。
このように、条件が絞られるほど売出件数が限られてしまうため、少しでも「気になる」と思った物件があれば積極的に問い合わせをし、内覧に行く行動力が求められます。
▼その他の学区情報はこちら
※児童数は令和6年5月1日時点の情報です。
エリアや広さを優先したい場合は、築年数を妥協する、または戸建ても検討するなど、柔軟な対応が必要です。
まとめ
いかがでしたか?
今回は「2024年の文京区中古マンション市場」をテーマに、価格動向やエリア別の特徴、そして2025年に向けた物件探しのアドバイスをお届けしました。
最後に、2024年の取引事例から見える傾向を簡単にまとめておきます。
①最も需要が高い物件
専有面積70㎡前後、築20年程度で1.2億円未満の物件が、ポータルサイトからのPV数や問い合わせが最も多い傾向があります。
②広い部屋を探す際の注意点
80㎡以上の広い部屋(築浅)を中古市場で探すのは選択肢が限られるため、築年数を妥協するか、一戸建ても視野に入れる必要があります。
③高価格帯エリア
春日・後楽園駅周辺、湯島、本郷、茗荷谷、誠之小学校区、窪町小学校区域は文京区内でも特に高価格帯のエリアで、価格上昇傾向が続いています。
④価格改定のタイミング
売出開始から1ヶ月を過ぎると、価格改定が増える傾向があります。売出物件の半数は値下げされ、平均値下げ率は5〜6%に収束しています。
⑤物件探しの戦略
条件を厳しく設定しすぎると選択肢が極端に減るため、築年数を妥協したり、広さやエリアで優先順位をつけることがポイントです。
今回の記事でお伝えした内容が、これからの物件探しに少しでも役立てば幸いです。
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