1月~3月は賃貸業界は繁忙期。物件数が多くなるということはそれだけ退去する人がいます。
賃貸物件を探している方は管理会社(又は大家)の評判も必ず聞きましょう。
賃貸住宅の相談で一番多いのが「退去時の敷金精算」のトラブル。
・高額な退去費用を請求された
これから引越シーズンのピークを迎えるにあたり退去費用のトラブルが増えると思うので、今回は退去費用で損しないため、そして不当な請求をされた時の対処方法について解説します。
一部ですが不当な請求をする業者がいるので、これから賃貸契約をする人、退去予定な人に少しでも参考になれば幸いです。
当記事の内容は動画でもご覧いただけます。
1月30日(土)12時に「住まいるTV」で公開します。
賃貸住宅退去の流れ
まずは解約から退去までの流れを確認しましょう。
STEP① 解約を申し出る
退去を決めたらまず契約書に記載の解約方法について確認してください。一般的に借主からの解約予告は退去の1か月前、もしくは2か月前までに書面で申し入れる必要があります。
間違いの内容、契約書を見て解約方法について確認しましょう。
STEP② 立会日の連絡
引越が決まったら管理会社に連絡をして、退去の立ち合いの日時を決めます。
・住民票の転入届・転出届・転居届
・郵便物等の転送届
・電気、ガス、水道の停止手続き
その他、住所変更が必要な手続きは済ませて自分が持ち込んだ荷物はすべて出し、きれいに清掃してから明渡しをしてください。
STEP③ 退去立会、鍵の返却
管理会社、もしくは委託を受けた業者が退去時の部屋の状態を確認しに来ます。
・残置物の確認
・鍵の返却
STEP④ 敷金精算
預けている敷金からクリーニング費用と借主の故意による過失があった場合は、その補修費用が差し引かれて指定口座に振り込まれます。
以上が一般的な流れです。
敷金はいくら戻ってくる?
賃貸住宅を借りるときには「敷金」と「礼金」それぞれ家賃の1~2か月分を支払うのが一般的です。
近年、敷金がゼロで契約できる物件も増えましたが、「保証金」や「クリーニング費用」が別途契約書に記載されていて、敷金が1か月分の物件よりも退去時に高くなるケースもあるのでご注意ください。
契約内容をしっかり確認しましょう。
敷金とは?
簡単に言うと、もしあなたが賃料を支払わなかったり、部屋を損傷させたりしたときに修繕費用として充てるために貸主が事前に預かるお金のことです。
礼金とは?
その名の通り、貸主にお礼として支払うお金です。
では、この預けた敷金はいくら戻ってくるのでしょうか?
それは、「退去時までわかりません。」
もしかしたら預けた敷金は戻ってこないかもしれないし、別途修繕費用を請求されるかもしれません。
「えっ!?どういうこと?そんなの聞いてないよ!」
ただでさえ新生活でお金がかかる時期に余計な出費は避けたいですよね。
少しでも多く敷金が戻って来て欲しいと思うはずです。
今回のテーマはここからが重要です。
現在、賃貸住宅を契約中の場合は契約書を確認してください。
入居中注意すべきことは?
あなたが退去した後、次の入居者を募集するためにも部屋の汚れや損傷を修繕する必要があります。
現状回復するための修繕の費用を「借主」と「貸主」どちらが負担するのか?
トラブルが多い理由は、「借主」「貸主」が負担すべき割合の認識にズレがあったり、契約書の表記が曖昧な場合があるからです。
問題が生じたときのために、国土交通省が「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を定めているので一緒に見てみましょう。
現状回復とは?
「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義し、その費用は賃借人負担としました。そして経年変化、通常の使用による損耗等の修繕費用は、賃料に含まれるものとする。」と、記載があります。
ポイント
原状回復とは、借主が借りた当時の状態に戻すことではありません。部屋は経年変化するものなので、自然損耗部分については貸主が負担すべきものだからです。
通常考えられる生活では起こり得ないような損耗・毀損については「借主が負担してね!」と言ってるわけです。
では、ケースごとに借主・貸主どちらが負担すべきものなのか?次は「東京都の賃貸住宅紛争防止条例」を確認しましょう。
借主が負担する必要があるとされるもの
貸主が負担する必要があるとされるもの
不注意で部屋を汚したり傷つけたりしてしまった時は借主が負担することになりますが、普通に生活していて発生する傷や汚れ、設備の不具合については貸主が負担するものです。
賃貸借契約では一般的に2つ特約を定められるケースが多い
①小規模な修繕について。
室内の電球・蛍光灯・給水・排水栓(パッキン)の取替えについては借主が自らの費用負担で行うこと。
②退去時のハウスクリーニング費用
この場合、敷金からハウスクリーニング費用が差し引かれることになります。
※費用は契約書に明記されているので、必ず確認してください。
例居住期間の長短に関わらず、退去時に敷金からクリーニング代(平米あたり1,000円/税別)を差し引くものとする。
契約書に記載があった場合、30㎡の物件の場合なら33,000円(税込み)ということになりますね。
この2つ以外の特約を盛り込まれた時はご注意ください。
特約を定める場合当該特約により賃借人が負担する具体的な内容(費用)を明記しないとその特約は無効です。
退去費用を抑えるためにできることは?
①善管注意義務を理解する
まずは借主が守るべき「善管注意義務」についておさらいしましょう。賃貸契約の際、必ず説明されます。
どんなケースが該当するのか?例を見てみましょう。
2.お風呂や台所、洗面所等の水回りの清掃を怠り、カビや著しい汚れが発生した場合
3.下地のボードが損傷するほど釘やネジをつかって壁に穴を開けた場合
4.鍵を紛失した場合、等です。
このような場合は借主の管理が不十分であったとみなされ、補修費用が請求される可能性が高いので気をつけください。設備の故障・不具合が生じたときには、放置せずに速やかに管理会社に報告するようにしましょう。
賃貸契約の際、お部屋の「明渡し時の原状回復」について説明を受けるときに「賃貸人・賃借人の修繕分担表」が渡されると思います。
こちらをよくご覧になっていただき「善管注意義務」を守って生活をすれば余計な費用は抑えられるはずです。
床や壁、建具、設備それぞれどちらが負担すべきか記載があるのでご確認ください。
②入居前に部屋の状態を確認する
善管注意義務違反による破損や損耗かどうかは入居時と比較して判断されます。傷や汚れは入居中についたものなのか、最初からあったものなのか?が重要です。
一般的に賃貸契約をすると「入居時チェックリスト」又は「物件状況報告書」を渡されます。これは入居時の室内と設備の状態を記録しておく書類です。
提出期限があるので必ず出しましょう。提出しないと退去するときに傷や汚れが発見された場合、敷金精算を巡ってトラブルになる可能性があります。
もし、紛失した場合は管理会社が控えを持っていると思います。「入居時チェックリスト」を出していない場合で、入居前からの傷や汚れの費用を請求された場合は「入居前にその傷や汚れはなかった」という証拠を管理会社に出してもらってください。
※請求をするからには証拠を出す必要があります。
ポイント
2.水回り、建具や窓の開閉は問題ないか
3.傷や汚れや不具合がある時は報告、写真を撮る
4.やりとりはメールを活用するなど記録に残す
③保険が使えるか確認する
賃貸契約をする際、必ず火災保険に加入します。この保険には日常生活にかかわる賠償、個人賠償責任保険がセットされています。
例えばこんなケースの場合、保険が適用される可能性があります。
保険例「日新火災」東京海上ホールディングスの場合
・洗濯機のホースが外れて部屋中が水浸しになり、フローリングを汚損させた。
保険が適用できるのは「入居中」です。保険会社によって補償の対象が異なります。ご加入の火災保険の補償内容を確認してください。
④部屋の掃除はどこまでやればいいの?
特約で定められている場合、大掃除したからといってハウスクリーニング代が安くなるわけではなりません。
重要なのは、「借主が責任を負う可能性がある箇所」は特に念入りに掃除、必要に応じて自分で補修することで、余計な修繕費が請求されなくなる可能性があります。
・キッチン、ガスコンロや換気扇の油汚れ
・子供の壁の落書き
・フローリングの傷やシミ、カビ
いずれも検索すると、効果的な掃除方法が紹介されてるのでぜひ調べてみてください。あとは、先ほど紹介した「賃貸人・賃借人の修繕分担表」を見て自分で掃除、補修できるレベルのものはやっておきましょう。
不当な請求をされた時の対処方法
退去をする時に請求されるのは、「ハウスクリーニング費用」と「借主の故意による過失の補修費用」と解説してきました。
※物件は部屋のグレードによって異なります。
1人暮らしの1K 20㎡なら20,000円~30,000円
家族向けの2LDK 60㎡なら60,000円~90,000円
クリーニング代の費用については契約書に明記されてると思うのでご確認ください。「故意による過失の補修費用」がなければ預けた敷金から「ハウスクリーニング費用」が差し引かれた金額が戻ってくるという計算になります。
これで済めば一件落着ですが、賃貸の契約期間は人によって違うし使い方も様々です。1年で退去する人もいれば5年以上住んでいる場合もありますよね。期間が長くなればなるほど何かしら補修費用を請求される可能性が高くなります。
では、「不当な請求をされた時の対処方法」についてアドバイスします。
以下の内容を実践してもらえれば減額になる可能性が高いです。正しい知識を身につけ交渉しましょう。
①不当な請求とは何か?
ここでいう不当な請求とは・・
1.本来、貸主が負担する分まで請求される
2.補修費用が相場と比べて著しく高い場合です。
②どのタイミングで請求されるのか?
「退去の流れ」をもう一度見ましょう。
退去立会をする場合、管理会社もしくは管理会社から委託を受けた業者が来ます。入居時チェックリストを元に汚れや傷、破損箇所について確認し、終了後、鍵を返却する流れになります。所要時間は30分前後。
「補修費用」の見積書をもらうのは、退去立会時か、退去後、後日郵送(又はメール)で送られてきます。
③退去立会する場合の注意点
原状回復費用の負担を借主側・貸主側のどちらの負担にするのか?をはっきりさせる目的で行われるのが退去時の立会いなので、主張すべきことがあれば必ず言いましょう。
そして、もし立会終了後、「補修費用」の見積もりを提示され、その場で支払いのサインを求められた場合は断りましょう。
サインしたこと理由に後から減額交渉しても断られる可能性があるからです。
※知人に詳しい人がいるので、見積書を確認してもらってからにしたいとでも言えばOKです。
なぜその場でサインしない方がいいのか?その補修費用が「残存価格での請求になっているか?」「相場よりも著しく高くないか?」判断できないですし、立会の短い時間で適正な金額を請求することはそもそもできないはずだからです。
本来、物件の状況次第で変わるばずなのに一律に上乗せした価格で請求し、何も言わずサインをしてくれたらラッキーと思うような業者が一部います。
なので、可能なら退去の立会は業者だけでやってもらうように頼み、立ち会う場合は誰かに頼んで付き添ってもらうのがいいですね。言葉巧みに請求されるのは嫌でしょうから。
そして、あらかじめ解約を申し出るときに退去の流れ(立会いの有無)、補修費用が発生した場合の流れについて管理会社に確認し、解約通知書の内容も不利な点がないか確認しておくのがいいしょう。
④見積もり額をチェックし交渉する
請求された金額の内訳を見て、国土交通省が定めている「原状回復」のガイドラインにそった内容になっているか?確認しましょう。
・請求額は「残存価格」での請求になっているか?
・借主と貸主の負担割合は適正かどうか?
費用の目安については、こちらのサイトで紹介されているものが参考になります。請求書と照らし合わせて確認するのがいいと思います。
参考原状回復ドットコム|工事料金表
特に部屋の「壁紙・クロス」、「フローリング」、「畳」で不当な請求をされるケースが多いです。中には全面張替えを請求されビックリするような費用を請求をされた方もいるようです。
借主の故意・過失・善管注意義務違反による汚れや傷であっても、借主が全額負担する必要はありません。
畳・床・カーペット・クッションフロア・壁紙(クロス)の耐用年数は6年とされています。
例えばあなたが壁紙の一部を不注意で破いたり傷をつけてしまった場合、費用の負担は破損部分の補修工事に必要な施工の最小単位に限定されます。
色合わせのために全体を補修すると言われても、借主が払うのは壁紙一面分から通常損耗・経年変化分を除いた分が負担になります。畳だったら1枚分になるということです。6年経過してたら価値(1円)はなくなってるので、補修費用は貸主が負担すべきものになります。
そもそも入居時の室内の設備が新品だとは限らないですからね。
ポイント
見積書が簡易的なもので細かい記載がない場合は明細をもらいましょう。そして「自分が支払う必要がない!」「高すぎる!」少しでも疑問に思うことがあれば管理会社にいいましょう。泣き寝入りせず、納得のいく説明を求め減額交渉しましょう。
また、その際は電話や対面ではなく証拠が残るようメールでやり取りするのがいいでしょう。
明細書を見ても判断がつかない場合、減額交渉しても応じてもらえない場合は専門家にアドバイスをもらってください。まずはこちらの窓口に相談するのがいいと思います。
http://www.kokusen.go.jp/map/index.html
・日本賃貸住宅管理協会
https://www.jpm.jp/consultation/
2020年4月1日に施行された民法改正で敷金返還義務や原状回復についてのルールが明文化されました。「通常損耗」や「経年変化」による部分については貸主が負担するということです。
これまで「国土交通省のガイドライン」と東京都の「賃貸住宅紛争防止条例」をベースとしてはいましたが、法的強制力がなかったため退去費用についてトラブルの原因となっていました。
これからは法律で定められたことにより、トラブルが少なくなることが期待されます。
それ以前に契約している場合でも、正しい知識があれば仮に不当な請求を受けても対処できるはずです。当記事だけではケースごとの悩みの解決には不十分だと思いますので、他の方の情報も参考にしてください。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
※私も改めて「国土交通省のガイドライン」「東京都賃貸住宅紛争条例」の資料を見て勉強し、足りないところがあれば追記します。